みどみどえっくす

元NO.1風俗嬢がゲスに真面目にエロを語る

青木まりこに学ぶ、青春の理想と現実。(後編)

「はぁはぁ・・・着いた・・・」

此処が、私が追い求めた場所。便器。

もう迷うことはないし、怖がることもない。

私は有能な女スパイ。

これからミッションを遂行す・・・・っって、、、







えぇぇぇぇーーーーーーーーーー!!!!!!

 

ないじゃん。ないじゃん!!

アタシの参考書!

うっそぉ・・・

誰かに持って行かれちゃった?

あんまりあり得ないと思うけど、もしかしたらドンピシャでマニア愛好者が私の後に入って、私の参考書を盗んで行ったなんてこと・・・あり得る・・・?

 

いやもしかしたら、私が参考書を買うところを誰かに見られていたのかも。

きっとその人、私がトイレに忘れ物するって初めから知ってて・・・

そうだとしたら、その人がスパイなの・・・?

 

いえ私、取り乱すのはヤメにして大人しく管理事務所に電話して、忘れ物を取りに行くってアポ取ったんです。

 

電話の向こうでオジサンが「あぁ、ついさっきね、雑誌の忘れ物のお届け、ありましたよぉ。確認に来てもらえますぅ?」

なんて言うから、あぁ何だ、きっと誰にもバレなくって本当に良かったなぁなんて安堵しながらすぐに指定された事務所に入って行って。

 

これで袋のまま受け取れば、まぁ色んな事があったし遠回りもしたけれど、無事ミッションクリアってところかしらね、って思っていたんです。

 

ミッション遂行にハプニングは色々と付き物だわ。

これこそ映画みたいじゃない。女は生まれながらにして女優とはよく言ったものね。

 

あぁ、はいはい、一応電話番号と名前と住所書け?

まぁ、そうだよね、もし私が極悪なスパイとかだったら、これ盗まれちゃったらダメだものね・・・

 

 

え?落としたものの種別も書け?

あぁ、雑誌です。雑誌。あと参考書。

 

 

は・・・・?


 

 

 

 

 

 

一応雑誌と参考書のタイトルも書いとけ・・・??

 

 

ウソでしょ・・・

いや、こんな事があっていいわけない。

だって私は落とし物をしただけなのに、何この仕打ちは・・・

一体全体、私が何したっていうのよ?

 

「書かなきゃダメですか・・・?」

「ん?ん~まぁ、もし万が一、君が手違いでこれを持って帰ってしまったという事があったり、まぁ無いとは思うけれど、君が今からこれを盗もうとしているとすると、本当の持ち主さんが現れた時に問題になるよね。だから、書いて。」

「でも、これは間違いなく私のものです。名前も住所も書いたし、もし何かの手違いがあるならば、ここに連絡をください。」

「あはは・・・!いやぁ、書けばいいじゃない。君、なに?なんかあるの?書けばいいっつーか、書いてもらわないと、ねえ。」

 

そんなやり取りがあって涙目になりながら、私が備考欄に書いた言葉は

 

 

 

 

 






「マニア倶楽部」(スカトロジー愛好者向け)

 

 

 






書いた瞬間の、オッサンの哀れみの目。

「あぁ、だからね・・・」っていうすべてを悟ったその表情には、軽蔑と哀れみが混合した全ての感情を孕んでいたんだと確信した。

ついでに言うと「何で君、こんな若さでこんなもの好きになっちゃったのさ・・・」っていう心痛の念も込められていたんだと思う。

そしてわかりやすいまでのため息をつかれる。

 

 


ため息つきたいの、こっちだよ・・・

 


被害妄想でしょうか。いえ、自業自得でしょうね・・・

 


ここで上記の太字に戻りたいと思う。

「よって、トイレっていうのは本屋のトイレというよりは施設内のトイレを利用することになるんですが。」

 

落とし物をしたのが本屋の中ならばまだ、色んな意味で良かった。
このマニア向け雑誌を買ったことは、私と、レジをした童貞包茎(仮)の秘密に出来たのだと思う。

 

しかしそれは単に淡い妄想に過ぎなく、事実私は事務員が何人も座っている事務所内で、私を咎める全ての目線を集める事になっていた。

 

 

神様、一体全体、私が何をしたっていうんです?

前世にどんな因縁があれば、こんなに大勢の前で自分の性癖を公言し、挙げ句の果てに溜息をつかれるのでしょうか・・・?

 


私はいまだにあの日を思い出しては、若かった自分に対し胸がチクリと痛むのです。

そして、あの日の自分を、今でも慰め続けているのです。

「怖かったね、心細かったね、でも、もう大丈夫よ」と。

 


あの日、青春の理想と現実の狭間に揺れ動く私が、青木まりこに教わったこと。

それをティーンエイジャーだった頃の私に教えたい。

 

君が心底羨んでいた甘酸っぱい青春とは、有り体に言えば所詮幻想に過ぎなく、本来青春とはほろ苦く、そして淡い。

だが、それで良いのだと。

 

そんな事を若かりし頃の自分に言ってあげられるくらいには、私はあれから随分と大人になってしまったのだなぁと、また胸がチクリと痛むのです。