風俗嬢も、誰かのためになりたかった。セックスボランティアについて。(後編)
こんにちは。また、前回の続きからです。
今回で完結します。
前回、前々回同様、拙い文章ではありますが、良かったらどうぞお付き合いください。
前回、前々回の記事をご覧いただいていない方は、お手数ですがこちらからお願いします。
前編
中編
前回の記事で申しましたように、私には身体的に障害のあるお客様がいました。
彼はお会いする頻度こそ少ないものの、私が引退するまで約二年ほどのお付き合いになりました。
その中で彼が感情的になったのを見たのは、一度だけです。
男として、好きな女性を抱きしめることも、きっと髪を撫でてやることもできない。
そして全てが受け身でなければ、完結しない。
本当に悔しいことなんだ、と涙を流しました。
私は自分が人よりちょっぴりいやらしい女である事を自覚しています。
こと性行為に関しては、好奇心旺盛です。
しかし、性について真剣に考えたことがなかったし考えることすらして来なかったので、彼の言葉にひどく動揺しました。
彼のそれは、束の間の娯楽や気分で性風俗を利用することとはまるで違います。
彼には、切実な思いや願いがある。
「どうしても」という事情や気持ちがある。
自慰行為もままならない性生活を送る彼に、どうやって心を寄り添わせれば良かったのでしょうか?
私はいまだにわかりません。
そして彼に対して私が出来るたった一つの事。それは他のお客様同様献身的に尽くす事だけでした。
彼の悲痛な叫びを聞いて事実は受け止めるが、下手に同情したり気まずくなったりは、どうしてもしたくなかったのです。
私は私らしく、明るく元気に彼と世間話をしたり。
時には恋人のように、寄り添ってみたり、甘えてみたり、抱きしめてみたり。
一度だけ彼の誕生日に、一緒にパーティーをしたりもしました。
私はお祝い事があると、お花を贈る事がよくあります。
彼にもと思ったのですが、せっかく貰っても自分でお世話が出来ないからという理由で丁重にお断りをいただきました。
確かに言わずもがなです。
私はそんな相手を目の前にしても尚、気の利かない女なのです。
ひどく猛省し、甘いものが好きな彼の為にケーキと、あらかじめ用意してあったプレゼントを持って行きました。
彼に対し同情する気持ちがあったからなのかは、自分でもよくわかりません。
あったと言えばあったし、無かったと言えば無かった。
しかし彼のいつもの素敵な笑顔より、もっと素敵な笑顔を見たいという気持ちは、確かにありました。
きっと私はその頃、「風俗嬢とお客様」という垣根を少しばかり越えていたのだと思います。
姉さんとは音信不通でした。
定期的にスタッフに姉さんの安否を聞いてはいましたが、いつまで経っても良い返答が得られない。
「まだ、わからないんだ」と・・・
もう諦めたら?と言われることもありました。
私も半ば、いい加減にしつこいよな、と思い始めてはいました。
そんな時に、突然姉さんからLINEがあったのです。
姉さんが店を辞めて、確か一年と少し経っていました。
「やっほー!元気にしてたかー?店にまだいるね!頑張ってるかー?」
こちらの気持ちをよそにあまりにフランクな始まりだったので、だいぶ複雑な気持ちになったのを覚えています。
嬉しい気持ちと悲しい気持ち、寂しさ、切なさ、怒気、安堵、疑問、全てが一度にやって来ました。
今まで何してたの?
元気なの?
何故突然いなくなったの?
聞きたいことは山ほどありましたが、どう返信しようか迷っているうちに、またLINEが来ました。
突然姿を消して、今まで連絡できなくて申し訳なかったこと。
飛び出して行った手前、自分の目標が成功するまでは連絡出来なかったこと。
親の反対を押し切って上京し、めでたくシンデレラストーリーを歩んだホストかキャバ嬢か?と思いました。
私にはそんな事は、どうでも良かったのです。
ただ連絡をくれたこと、元気でいてくれた事が嬉しくて仕方なかった。
姉さんは、初めこそセックスボランティアとして仕事をしていたようですが、やはり肌と肌の触れ合う温かみをどうしても諦められずに、今度は介護の勉強をしながら、障がい者専門の風俗店で働いていました。
そして、まだまだ資格も取れていないし勉強中ではあるが(ここまで粘ったのなら合格できてから連絡ください(笑)やはりどうしても気になってLINEをくれたんだそう。
突然飛び出して行ってしまったのだから、何かしら覚悟はあっての事だと思ってはいましたが・・・
本気すぎるよ、姉さん・・・
まぁ、昔からストイックな姉さんらしいかなとは思いましたが。
今はまだまだ勉強中ですが、介護施設で働きながらもまだまだ業界でバリバリ頑張っています。(国家資格ってものすごい時間と勉強量が必要なんですね。感服です・・・)
風俗業界って、楽してお金を稼ぎたいとか、普通の昼職では働けないとか、まともにコミュニケーション取り合えないなっていう子もいるんです。
適当に日銭稼いでホストに行っちゃうような子も、一部いるのは事実です。
でも、こうやって目標持って頑張ってる人もいる。
たまたまそこが風俗だったってだけで、誰かに必要とされたい、誰かのためになりたいと思って必死にもがいてる人もいるんです。
障がい者の方の性っていうのは、出来れば触れたくはない部分です。
健常者が多数を占める一般的な性風俗店で、風俗嬢はお客様の欲を満たすだけでも必死です。
ましてや適当にその日暮らしをしている嬢に、障がい者の方の悲痛な叫びや切実な願いは到底届かない。
だからこそ、障がい者の方専門の風俗店や性介護はもっともっと堂々と普及していくべきだと思うのです。
私は姉さんのようには出来ていないし、ましてや相手は自分のリピーター様一人のみ。
しかし、彼と真剣に向き合ってきたからこそ思う事も、当然あるわけです。
だからと言って難しく考えた事なんてなくて、ただただ彼の笑顔のその先が見たい。
彼のために、なりたい。純粋にそんな気持ちでした。
やはり、健常者のお客様に接する時とは、やり方も気持ちもだいぶ変わってきます。(健常者のお客様をないがしろにしていたわけではないですよ。)
たとえば健常者のお客様に対するそれが一貫としてエロならば、彼とは心の繋がりを一番に考えてきました。
私は自分と姉さんしか知らないけれど、障がい者の方専門の風俗店で働く方は、何かしら覚悟や思う事があるのだと思っています。
私はそんな方々に、リスペクトの気持ちしかありません。
自分が覚悟をもってできるか?と問われれば、きっと出来ないと答えると思います。
しかし毎回「今日も本当に本当にありがとうね。また、呼ぶね。」と言う彼の満面の笑みと、「俺は好きな女性が出来たとしても、抱きしめることも出来なければ、きっと髪を撫でたり、辛い時に涙を拭いてやる事すら出来ない。」と言う彼の涙を交互に思い出してはまだ、忘れられそうにないのです。
私は、まだまだ模索中です。
自分にできる事は何か?もしかしたら何も出来ないのかもしれない。
何かするには、覚悟が足りないかもしれない。
けれどきっと彼のことと、彼の気持ちは忘れないと思うし、忘れてはいけないと思う。
いつか色んなことを教えてくれた彼に、彼のような方々が見てきた性社会に、恩返しできたらいいなと思う。
まだまだ、そんな漠然とした思いです。
今現在、日本には身体障害を抱えている成人男性は約190万人と言われています。
きっと彼のように、切実な事情と綺麗ごとでは救えない感情を抱いている障がい者の方は多数います。
彼と同じようなものを抱える障がい者の方の気持ちが、何者でもない私が書いたこのブログを通してでも、いつか色んな人に届きますように。
そう願っています。
さて、思いのまま、気持ちを書き殴るに近い形でだいぶ酷い文章になってしまいましたが「元風俗嬢である私が思うセックスボランティアについて」は以上になります。
非常に長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださった方、本当に本当にどうもありがとうございました。
そして私とあなたの出会いから始まり、あなたとの関係、あなたの気持ち、当時のことなどをブログに掲載することを快諾してくださったKさん。
あなたも、本当に本当にありがとうございました。
こんな私ですが、今まで沢山お世話になりましたことを、本当に感謝いたします。
皆様がたも、良きセックスライフを!
まだまだ残暑が続きますが、食、睡眠、排泄あってのエロです。
どうかご自愛専一のほどを。
では、また。